前の晩はハンシの家近くのアグリトゥリズモに宿泊、トレントまで南下して、その後は山間を通る一般道でヴァルドッビアーデネを目指すも、その道を見つけるのに少々難渋。それでもお昼時にはカーサ コステ ピアーネに到着。
とりあえず畑を見に行く。
当主ローリス、恐ろしく博学。特に植物、食べ物、ワイン、絵画、文学、建築に関しては。
こんなのや、
こんなの、
そしてこんなのとか、もはや仕立てとは呼べないような樹が結構あります。
樹齢が100年を超えるものとかもあるようですよ。
畑でいろいろ話をする中で、ローリスが、”植樹密度が高い”とか、”ブドウ樹一株に~房(もしくは~kg)のブドウしか生らせない”など、いつの間にか”攻めている(と思わせる)”ことが、世の中的にワインの価値、評価を上げる要素となっているようだけど、果たしてそこに本当に真実があるのか?という話をしていました。
ローリスの畑の場合、樹齢4-50年を超える樹ばかりで(場所によっては80年以上)、その樹がブドウを作り続けてくれるということ自体が大事なわけですし、株間が比較的詰まった状態になっているブドウからは1株あたり2-3kgを収穫するかも知れませんが上の写真のようなモンスター樹からは倍量収穫するかもしれないわけで・・・。
さらに彼は無肥料(有機質でさえも使いません)での栽培、そして水はけの良い斜面で栽培しているわけですから、収量制限などしなくてもこの地域のアベレージ(化学肥料を多用する慣行農業、そして平地に畑があるect・・・)よりは遥かに低い収量になります。
道向こうにある隣人の畑。除草剤を使い、草が枯れ果ててしまったため、今まで根が斜面にとどめておいてくれた土砂が大雨時に流れ落ちてしまったの図。これだけの斜度で、土留めもなければ、こうなることくらい考えれば分かりそうなものですが・・・。
世の中には”草生栽培”などとかっちょいい言葉もありますが、ローリスのように、この土地ではそうする必要があることを伝統の中から学び、それを実践しているだけという人もいたりします。
”有機栽培をしています”とか、”除草剤を使ってません”とか、”草生栽培をしています”というと何か特別なことをしている風にも思えますが、案外そうでもないんじゃないかと。
一番分かりやすいのがまさに”有機栽培”などというやつで、ボルドー液以外のあらゆる農薬も、除草剤も化学肥料も5-60年もさかのぼれば存在しえず、、有機栽培なる言葉もそれが普通だった当時は存在していなかったのではないでしょうか。
昔(農業の場合、数千年の間)、普通だったことがいつの間(ここ5-60年で)にか普通じゃなくなり、その普通じゃないものだけを目の当たりにして育った人がそれを普通と思うようになり・・・。その時代の主流(メジャー)であることが、普通(普遍)であると考えることって本当に危険なことなような気がします。
そしてワインそのものの話にしても、今ほど醸造設備がなかった、もしくは高価だった時代、プロセッコは収穫翌春にボトリングし、ワイン自身の持つ酵母、残糖と春から夏にかけての気温の上昇を利用して、瓶内2次醗酵を促した天然微発泡性の、そしてうす濁りのワインだったわけで、シャルマー方式による(濁りのない)プロセッコは戦後、ワインが商業化(大量生産を実現するため)の波に飲まれていく中で生まれたワインで、その歴史は非常に短いといえるのではないでしょうか。
ローリスも”自身の持つ酵母を利用して、瓶内で2次醗酵をするのだから、醗酵後もボトルから酵母を取り除くべきでないのでは。もちろんそうするためには、ブドウが健全であることが必須だけど。”と言っています。彼が自分のシュール・リーをサービスする時は、そのほうが味が均一になるし、澱が混ざっているほうが美味しいしということで、一度ビンを逆さまにして澱をワインに馴染ませています。。
酵母が混ざってしまうと、酵母の香りが勝ってしまい、ワインの繊細な香りを感じることができないという方がいるとするなら、その方は日本酒のにごり酒(もしくはうすにごり)に関してはどう考えられているのでしょう。酵母なくしてワインは存在しないのに、なぜとある段階から邪魔者扱いされるのでしょう?
とはいえ、巷で見かける、恐ろしく濁った(澱が1フィンガーくらいある)、SO2無添加かもしれないけど、無茶苦茶還元したワイン(多くが微発泡性)などに関しては、僕自身は?????だったりします。
(そのワインの造り手、そしてその愛好家が、)あの味わいが”美味”に属すもので、その美味を実現するためにあの多量の澱が必要だと考えているのでしたら、僕とは価値観が違うということで話は終わるのですが、酸化防止剤無添加で醸造・ボトリングすることが第1の(そして唯一の)目標になって、他のいくつかの欠点(酵母由来の多量の澱、極端な還元など)を黙視しているのだとすれば、本末転倒な気がします。
ローリスは料理上手。オカヒジキとポーチドエッグ
ヴェネツィアの地品種カルチョーフィ
放牧で育てられた牛、こういう肉はやめられません。
飲んだワインは、
彼らのシュールリー2007
有名な自転車選手が近くに家と畑を買い、とある造り手に彼のブドウでシャルマー方式のスプマンテをローリスにシュールリーを造ってもらう。2008のスプマンテはもう普通に出来上がっていた(大して美味しくはなかったけど)、シュールリーのほうは、ボトリング後、窓際の暖かい場所に置いておいたもの(2次醗酵が進むかどうかを見るために、何本か置いておくそう)を飲ませてもらう。やーーーっと醗酵が始まったって感じ。
GuidoPorroのBarolo2000
ViglioneのBarolo2004
にVillabelliniのPassitoBianco1992
あーお腹いっぱい!